小樽を出発し東の果てを目指した手羽先さんと私。
僕らの前に現れた標識には、あの"北の国から"で有名な地名が書かれていた。
そこへ行けばキツネを口笛で呼べるかもしれない…
雨に撃たれながら山頂でエンスト 坂道をそのまま引き返した先に辛うじてガソスタあり助かる。キツネ…これはキツネを口笛で呼ぶ為のイントロダクション…などと訳のわからない事を呟きながら50ccで駆けたのちに僕らの前に現れたのは
"ゴエモン風呂あります"と書かれた看板だった。
ラベンダー畑あります。スルー
こちら北の国から所縁の地。スルー
こちらメロン!おいしいよ! スルー
"観光施設"という名の数々のアリ地獄には一切目もくれなかった私たちも、その看板には自然と引き寄せられた。私は幼少の頃から田中邦衛ばりに薪を割ってみたかった。風呂が沸いたよぉぉと口をすぼめて言ってみたかった。ゴエモン風呂に浸かりながらキツネ呼ぶんやでっ!!!
とは言ったもののよく考えてみたら私は北の国からを見たことがなかった。
動くか動かないか絶妙なブランコ、使えるのか使えないのか絶妙な炊事場、遭難した時に逃げ込んで4人居たはずなのに夜中に1人増えそうな小屋、そんな風情ある広場を進むと、うず高く積まれた薪(少し湿っている)が。さらにその先には目隠し。男湯、女湯と書かれた看板。
きっとこの先にアレがあるに違いない。
中に入ると4基のゴエモン風呂。
そこにはあった。
軽く蜘蛛の巣が張っていた。
引き返す。
外に出ると、何やら屈強なオヤジが立っていた。長物を持っていたような気がする。ロードムービーにありがちな、誰構わずショットガンをぶっ放すオヤジに見えて思わず身構えた。なんとか怪しいものではない旨を伝えようとした。ガソリンスタンドを探していたらココにたどり着きました。我々は道に迷った哀れなバイカーだ。と
我々の善意と一寸の曇りもない心がオヤジに伝わったのか
ちょっと北に行けばスタンドあるよ。
宿が無いなら泊まっていけば良いよ。そこに小屋もあるから。ゴエモン風呂もあるし。笑顔はなかった。
オヤジのギャップと優しさに(笑顔はなかった)、丁寧にお礼を伝え、先を急ぐのでもしかしたら先に進むかもしれませんが、戻れそうだったら戻ってきます。とりあえずガソリンスタンド行ってきますと伝えた。
ちょっと行った。
目の前は完全に山道しかなかった。
通行人(これまた屈強な兄貴が馬鹿でかいトラクターの側で作業をしていた) に、この先にガソスタあるって聞いたんですけど、ほんまにあるんすかねー?と問うた。
ちょっと行けばあるよ。と言われた。
ちょっと行くと砂利道が段々と山道に変わり、更にちょっと行くと、そこは見渡す限りのジュラシックパーク(シダ科の植物に覆い尽くされた獣道、具体的なシーンで言う所のロストワールドでラプトルに追いかけられる場面で出てくるジャングル)だった。30分かそこらジュラシックパークを原付で走り、やっとの事でガソリンスタンドに辿り着いた。
北海道人のちょっとは僕らのちょっとと少し尺度が違うようだ。
帰る頃には日が落ちかけていた。先に進むのは諦めてゴエモン風呂に帰ろう。面白そうやし。あの親父さん意外と優しそうやったし。こんな時間に帰ったら"母屋に泊まっていきんさい。今日は採れたてのイノシシがおるけん"みたいな事になるはずちゃん。これまでの私達の引きの強さから言えば。邪念と打算的な考えに我々の頭は支配されていた。
ジュラシックパークにはもうコリゴリだった。振動により膝が笑っていたので、アスファルトの道を辿る事にした。途中スーパーがあったので食材を買い出し。猪を頂くのに流石に手ぶらではアカンと、野菜を買い込む。完全に僕らの舌は図々しく根拠のないイノシシ鍋に支配されていた。
アスファルトの道はジュラシックパークの更に倍の時間がかかった。北海道人のちょっとはもう舐めない。と心に誓う。
ゴエモン風呂に到着する頃にはすっかり日が落ちていた。
しかし何はともあれゴエモン風呂である。
親父さんから許可は頂いた。
沸かそうと試みた。
薪は湿っていた。が、手羽先さん曰く。焚き火はライフワークとの事だった。
キャンプファイアー手羽先さんの手に掛かれば湿った薪でもイチコロさ。ハートに火をつけるぜ。君の瞳をロックオン。そんな歌を歌っていたような気がする。
いい感じの焚き火が出来上がったので、ゴエモン風呂に水を入れた。焼け石に水。
しかしどんどん火が小さくなる。
ゴエモン風呂にヒビが入っていて、漏れた水がファイアーに直撃していたらしい。僕達は湯気と煙と焦燥感に包まれた。
ゴエモン風呂2号へ的を絞った。
また一からやり直し。しかしながらキャンプファイアー手羽先さんの手にかかれば湿った薪でもイチコロさ。ハートに火をつけるぜ。君の瞳をロックオン。何度でも何度でも。そんな歌を歌っていたような気がする。
ゴエモン風呂が沸いた頃にはもう辺りは完全に真っ暗だった。
ヘッドランプを装着の上20代半ばの男2人五右衛門風呂に入水。所々水だった。
火よ!火が必要よ!素っ裸でRE:ファイヤー
今度は熱い。水よ!水が必要よ!ホースで水を足す。なんとかぬるま湯まで漕ぎ着けた我々。再び入水。
湯気にまみれたヘッドランプの明かりがサーチライトみたいでかっこいいね!
バッドマンー!!とかなんとか、はしゃいでた様な記憶。
いつ横の暗闇から熊が飛び出してくるのかという不安もあったが、もうどうでもよかった。キツネの事はすっかり忘れていた。
入水を済ませた我々は野菜鍋を頂いた。
こう旅をしてるとね、生の豆腐の奥にある大豆感が物凄く体に染みるのですよ。みたいな謎の名言を手羽先さんは残しながら夜は更けていった。
朝
とんでもなく五右衛門風呂が適温になっていた。快晴。パーフェクトな朝風呂済ませて、一路帯広へ。
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