2015年5月7日

極めて個人的な追悼

一報を聞いてから一気に書き上げた物の自分の立場でこんな事を書いて何になるのか自問自答しつつ、いっその事この気持ち墓場まで持って行こうかなと思ったけれど、余りの自分の小ささに嫌気がさしたので投稿する事に決めた。そして多少美化し過ぎているかもしれない。ご容赦下さい…

 来日して大阪にも来るはずだったNew Birth Brass Band, Corey Henry and the Treme Funktet, のTravis "Trumpet Black" Hill が先日東京で亡くなった。28歳だった。

彼を初めてみたのは真夜中のニューオリンズの街頭。僕は先輩の運転する車に乗せてもらっていた。先輩が窓を開けて誰かと挨拶をしていた。「あれが最近出てきたトラヴィス。やばいで。」トレンチコートの様な物を羽織って、真っ黒な肌を持った彼。凄みを帯びた異様な雰囲気だった。まさか同世代だとはその時、思わなかった。9年間のお務めを終えた所だったらしい。

次の日だったか、Treme Funktetを見に行った。そこで吹いていたのが街頭で見かけた彼だった。筋肉で腕がパンパン、豪快にトランペットを鳴らす様は小さな戦車だった。時にはCorey Henryの横でしっかりとバンドに指令を出す司令官。3管編成のバンドだったが、その管の圧力はそれまでに体感した事のないものだった。呆然と立ち尽くしていた僕の体は気付けばビールまみれだった。

後日。集まるのがほとんど黒人で雑誌に店の名前も出ていないバーで演奏があるから。と先輩に言われた。非常に興味深かったので連れて行ってもらった。そのバーのフロントマンがトラヴィスだった。僕は最初、一曲だけでも一緒にやらせてもらえないかな。と頭から英語を捻り出していたら、彼から声をかけてくれた。ジュークボックスをいじりながら、メイズって分かる?この曲がかっこいいんだぜ。つぶらな瞳でコインを入れて選曲しながら話しかけてきてくれた。それまで感じていた印象とは大分違った印象。とてもフレンドリーで人懐っこく気さくだった。取りあえず楽器持って来いよ。お前、この前見てたぞ。とどこかで吹いていたらしい僕の事を覚えていてくれて、結局ライブの最初から最後まで横で吹かせてもらった。しかし、ライブが始まると人が変わった。音楽とライブに対する真剣さとか想いが全く違う。そんな中僕は知らない曲のオンパレード。自分の力不足でほとんどその場に立ち尽くすしかなかった。くやしかった。本当にくやしかった。その時の録音が残っているが僕の演奏はまぁ聞けた物ではない。

去年のランブルアウトに出演した後の彼と会った。恥ずかしくってあの時横で吹いていた日本人だと名乗る事が出来なかった。幸か不幸か向こうも僕の事を認識出来ていない様だった。その時、もう一度チャンスを掴んで横に出ていってあの時の挽回を。その時にきっと名乗り出よういつの日か。なんて、悠長な事を考えていたが、そんな想いはもうこの先遂げることもない。この一方通行の想いは永遠に行き場を失ってしまった。去年ランブルアウトでも見たフロアを貪欲に巻き込んだ圧倒的なライブパフォーマンスを目をつぶればいつでも思い出すことが出来る。

間違いなく自分の中の一つの指標だった。自分は顔も忘れられているようなそこまで近い人間ではないけれど。一方的ではあるものの彼からもらったこの自分の気持ち、考えを大事に真剣に必死に進んで行こうと思う。

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